2011年6月28日火曜日

先をみて仕事をするーそれが管理者の役割

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は訪問介護ステーションが看護師を雇用する体制と訪問看護ステーションとの連携によりサービスを提供する体制の二つがあります。

訪問看護ステーションを持つ大手の訪問介護会社はすでに「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」への対応策として訪問看護ステーション数を増やすことを計画しています。

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が対象とする利用者は重度の要介護者となっています。ちなみに訪問介護ステーションは要介護12の軽度の利用者が多いのですが、訪問看護ステーションは介護保険利用者の60%以上が要介護3上の中重度要介護者ですから「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は重度の要介護者が多い訪問看護ステーションには有利になる可能性があります。このような状況から大手の訪問介護会社は、同じ経営による訪問介護と訪問看護の連携による重度の要介護者の獲得を視野に入れています。
大手の訪問介護会社だけでなく訪問介護ステーションは訪問看護ステーションと連携することで重度要介護者の獲得を見込み訪問看護ステーションとの連携を打診してくる可能性は大です。このような申し出があったときあなたの訪問看護ステーションはどのように対応しますか?
「連携しない」「連携する」この二つの選択肢があります。「連携する」を選ぶと今まで訪問看護の対象者では比較的少なかった認知症の利用者の獲得ができること、また介護職と協働することでケアの分担が可能になり看護師の疲弊の緩和ができるなどのメリットが考えられます。ただし看護の専門性を損なわないような方法でと言っておきますが。

管理者のみなさん、改正の方向性が示されたのですから、まだまだ先のことだからと言ってないで今のうちから「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」への対応策を講じるために準備をしてください。
まずは改正介護保険制度の情報収集、そして自分のステーションの介護保険利用者の介護度と訪問回数の関係と看護内容等の把握また現在連携している訪問介護ステーションとの連携状況の分析から始めてみてはかがですか!きっと今後の訪問看護ステーションの取るべき対応が明らかになるはずです。

2011年6月23日木曜日

訪問看護の深いあじわい




写真の家は以前コラムで紹介した長崎県の五島列島福江島で撮りました。この家は6年位前まで五島のお姫様が住んでいたお屋敷です。築100年は過ぎておりこのたび県の文化財になり保存されることになりました。

このお屋敷に住んでいたお姫様は以前紹介した鐙瀬訪問看護ステーションの訪問看護を受けていました。当時お姫様は90歳を過ぎていましたがそれはそれは格式の高い方だったそうです。当初お姫様の訪問看護の受け入れは悪かったそうですが、看護師としてお姫様の状態に対処しつつ看護することを地道に続けました。そして最後の時になり長年仕えたお手伝いさんと訪問看護師に深々と頭を下げ「ありがとう」とひとこと言い残して亡くなったそうです。

沖縄県のある訪問看護ステーションでは、その昔首里城にお仕えしていた末裔の方に訪問看護をしていました。格式の高い家柄で訪問看護導入時訪問看護師は家の中に入れてもらうことができず足浴や下腿潰瘍の処置を玄関先で行っていました。訪問看護師が利用者の居室や浴室に入って看護ができるようになるには訪問看護で行った下腿潰瘍が改善したときで、訪問看護開始から1年近く経ってからだったそうです。もちろんこの方も在宅で亡くなりました。

多くの訪問看護師はこのような経験を持っていると思います。このような経験は訪問看護師に「訪問看護師でよかった」と感じさせてくれます。つまり「訪問看護師でよかった」と実感するときは、看護師として専門的な判断による対応・処置・接遇ができたときではないでしょうか。

訪問看護は医療機関の看護と違い訪問看護を行う場が利用者の家であり提供する側のペースでできないなど対応の難しさがあります。しかしどのような環境下でも看護専門職として看護するのが訪問看護と考えます。

2011年6月16日木曜日

6月15日改正介護保険法が成立訪問看護ステーションへの影響を考える

訪問看護に関連する内容は、24時間対応で行う「定期巡回・随時対応訪問介護看護」と訪問看護と小規模多機能型居宅介護を同一の事業所で運営できる「複合型サービス」二つの新サービスの創設です。

これらの新サービスは「地域包括ケア研究会報告書」が基本になって創設されました。地域包括ケアは生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護サービスだけでなくさまざまな福祉サービスを含めた生活支援サービスを提供し住み慣れた地域で在宅を基本として暮らすことができるように支援することを目指しています。

「定期巡回・随時対応訪問介護看護」のサービス提供体制は、ひとつの事業所で訪問介護と看護を提供する方式でも、訪問介護事業所が他の訪問看護事業所と緊密に連携して提供する方式でもよいとされています。「複合型サービス」は小規模多機能型居宅介護と訪問看護の両サービスを組み合わせたかたちが打ち出されています。

新サービスの創設とともに介護福祉士や一定の研修をうけた介護職による痰の吸引・胃瘻の注入ができるようになります。訪問看護サービスの医療的行為で多いのが吸引と胃瘻ですから介護職とのケアバッティングが起こることになります。

訪問介護と訪問看護の連携による新サービスの創設と福祉職の業務範囲の拡大はケアバッティングが多い訪問看護業務への影響だけでなく、利用者の確保や訪問件数の確保など訪問看護ステーションの経営に与える影響は大きいといえます。
すでにケアバッティングしている療養上の世話だけでなく診療の補助である吸引や胃瘻のケア等の医療的ケアを今以上に看護専門職が行うケアとすることが改正介護保険法の新しいサービスへの対応になります。

PS
萩原は全国各地の管理者研修で平成24年医療・介護ダブル改定への対応についても講演しています。研修開催のお問い合わせは各県看護協会や各県の訪問看護ステーション連絡協議会へ。

2011年6月13日月曜日

身近な相談者は管理者の助け

研修会等で会う管理者は多くの悩みを持っています。そして研修会に参加し解決の糸口を見つけようとします。
研修会では、さまざまな事例を通して参加した管理者にわかりやすくかつ共感を得ることができるような内容を話しています。そのためか会場での萩原の話す内容にうなずく、笑うなどの反応を示してくれる多くの管理者がいます。そして多くの管理者から目からうろこの研修会でしたという言葉を聞きます。
多くの管理者は訪問看護ステーションの難局を乗り越えたいと考えて研修会に参加しています。

 上の写真は管理者研修(財団開催名古屋会場)の研修後質問の場面です。この研修の参加者は90名、質問者は6名でしたが、研修終了後の質問者を合わせると10名以上になりました。受講生が聞いているところでは質問しにくかったということで、帰り際に質問してきた管理者もいました。
職員のこと、利用者対応のこと経営のことなどでしたがその内容は極めて個別性の高いものでしたので、身近に相談者がいなくて困っていることが推測できました。

訪問看護ステーションは、法人内にありながらその実態があまりにも知られていないというのが現状です。
日本訪問看護振興財団が平成22年に研修会の効果について検証した「訪問看護ステーションの経営改善のための調査報告書」によると、同じ法人内に親身に相談できる人物がいるかという質問に対し約4割の管理者には相談できる人がいないという結果がでました。
管理者はいわゆる中間管理職に相当する場合が多いにも関わらず相談する人がいないということです。これは憂慮すべきことではないでしょうか。
別の調査では相談者がいる管理者の場合とそうでない管理者の在職期間に明らかな相違があることがわかっています。もちろん相談者がいる場合の在職期間が長いのです。

管理者の多くはステーションの経営状況が思わしくないと、法人との距離を置いてしまうことが多くみうけられます。そうではなくもっとステーションのことを知ってもらうためにも、一人で悩むことがないためにも直属の上司への積極的なアプローチをしてみたらいかがですか。きっとよき理解者ができると思いますよ。

2011年6月6日月曜日

日本訪問看護振興財団の管理者研修 名古屋会場を終えて

64日(土曜日)日本訪問看護振興財団の管理者研修「本当は楽しい経営・管理」が開催され萩原が講師をしました。
萩原からの「ステーションの経営が楽しい人」の質問に90名近い受講生の中5.6名の管理者が遠慮しがちに手を挙げました。
そうなんです!経営が楽しいと感じている管理者のいかに少ないことか!

左のグラフは、昨年萩原が講師で全国5か所で実施した日本訪問看護振興財団の管理者研修の調査結果の一部です。
受講前と受講6か月後の収支状況の変化を比較しています。黒字になったステーションが増え赤字ステーションが減少しているのがわかります。6か月の結果では判断しかねるのではと考える方もいるのは承知していますが、結果は管理者が研修会で学んだ方法を実践した結果収支状況が良くなったことを表しているといえます。
そればかりでなく、「職員の看護のスキルアップができた」「職員の意欲向上」「職場のチームワークがよくなった」などの2次的効果があったという結果も出ています。

管理者は経営改善の方法がわかれば実践し成果をだすことができるのですから、成果を自らの成功体験とし自信をもってほしいのです。そうすれば本当は楽しい経営・管理になること間違いなしです。